エピローグ的な総論 エイジングサインへの対策は“予防”が何よりも大切です

私たちが生きていく以上、老化は誰にでも等しく訪れる現象です。
この項目では、肌老化はもちろんですが、年齢を重ねてもイキイキと過ごすために、
日頃患者さん達にお伝えしていることを、お話ししたいと思います。

何歳からエイジングケアを始めるべき?

生物学的視点でいうなら、老化は“生まれた時から始まって”います。
人間が呼吸をして“酸素”を体内に取り入れる以上、細胞の酸化ストレスと無縁ではいられないからです。見た目印象の点で言うと、30代くらいから老化サインを実感し始める方が多いようですね。40代半ば以降になると、女性ホルモンのバランスが変化するために、シワやたるみ等の深刻な肌悩みを実感する方も増えてきます。肌老化に対するケアは、老化の予兆が現れ始める20代後半からは必要になるでしょう。
ただし、お手入れは何歳からはじめても早すぎるということはありません。20代前半からでも、もちろん大丈夫です。老化サインは日々の生活で紫外線やストレスが蓄積した結果表面化するものですから、早い内からダメージの蓄積を防ぐに越したことはありません。特に紫外線ダメージに対しては、幼い頃からの予防をオススメします。

細胞の生まれ変わりには“良質な睡眠”が大切です

血流を促し、動脈硬化を防ぐためには、良質な睡眠が欠かせません。睡眠は体全体の機能や活動をコントロールする“ホルモンのバランス”と密接に関係しています。睡眠が不足するとホルモンのバランスが乱れ、皮脂の分泌や水分保持力に影響を及ぼします。また代謝のリズムや免疫機能も低下するほか、肌細胞が生まれ変わる力も低下する可能性があります。
詳しくはニキビの項目でご紹介しているので、そちらをご参照下さい。
とはいえ、多忙な現代社会においては、毎日規則正しく十分な睡眠を取ることは難しいかもしれません。そんな時には、昼間、たとえばランチ後に15分程度昼寝の時間を設けてみる、または寝具や明かりなどで寝室の環境を整える、など可能なことから工夫してみてはいかがでしょうか?

良質な水分を体内にもしっかりと補給しましょう

みずみずしい肌を維持したいなら、スキンケアで外側から潤いを補給すると同時に、体内に良質な水分を摂取することも大切です。水は人体の約60%をも占める大切な要素。水分は腸で吸収され、血流にのって全身を巡り、肌をはじめ全身の細胞に行き渡ります。ちょっと極端な例ですが、脱水症の方を診察すると一時的に肌がカサカサに乾いた状態に陥っているんですね。このような例からも、体内に十分な水分が巡ることは、美肌のために欠かせないことが分かります。よくモデルさんや女優さんが、美肌の秘訣としてミネラルウォーターを飲むという話を耳にしますが、理に適っているといえるでしょう。

通常は1日1.5リットル程度の水分を摂取するのが理想です。時々「水分をとりすぎるとむくむのでは?」という質問を受けることがあります。心臓及び肝臓に疾患がなく、血中のタンパク質濃度が一定であれば、本来はむくむ前に尿として排出されるはずです。水分を取るとむくみやすい方は、摂取量が多すぎる、もしくは運動不足や体を締め付ける衣服等の影響で、血の巡りが滞っているのかもしれません。ひどく心配する必要はありませんが、もし「ボーッとして力が抜ける」「集中力が低下しがち」というようなら、低ナトリウム血症の可能性がありますので、内科医にご相談下さい。

 

毎日の生活に“ハリ”があること、これがすなわち“肌のハリ”の源です。

医学的観点から言えば、“マッサージ”や“エステ”に、“治療効果”と呼べるほどの効果は期待できません。しかし、実際にこれらを体験した患者さんにお話しを伺うと、「体が楽になった」「肌のキメが整った」、さらには「気持ちが明るくなった」とおっしゃる方が少なくありません。マッサージによって交感神経が刺激され元気になったり、反対にリラックスして副交感神経が刺激され、良質な睡眠が取りやすくなるのかもしれませんね。
いずれにせよ、患者さんが“心地よい”“楽しい”と実感できることこそ“若々しさの秘訣である”と、私は考えています。そして、そのための方法は「何でも積極的に取り入れてみてください」と、患者さんにお伝えしています。

同じような環境で単調な生活を繰り返していると、会話の機会が減ったり、表情が乏しくなることがありますね。このような状態では、気持ちの面でも“ハリ”を失ってしまいま」す。気持ちにハリがないと“表情”に影響を及ぼし、疲れたような印象を与えることも少なくありません。
そんな時は、前述のようなマッサージやエステ等“自分自身をいたわる実感を抱けるもの”。さらには趣味のサークル活動など“生活に充実感をもたらすもの”に、挑戦してみてはいかがでしょう。他者と交流することで気持ちにハリが生まれ、会話を通して表情筋を鍛えることにもつながります。これは見た目印象はもちろんのこと、“エイジング”と上手につき合っていくうえで、本当に大切なことだと思っています。

私は“シワ”“たるみ”といった老化のサインを、局所だけでは捉えていません。
本質的な意味での“若々しい印象”は、体全体や生活習慣から生まれると考えています。
今後ますます、高齢化社会が進んでいく中で、私たち1人1人が肌はもちろん体も心も
健やかに過ごすために、クオリティーオブライフ(QOL)の向上が何より大切だと思います。

1 2 3 4 5 6 7 8